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「詩音は・・不器用なの、すごく。母親のことも兄貴のことも・・父親のことも。
そしてあなたのことも・・ね。
好きなんだよ、好きだったんだよすごく。でも上手にいえないし、表現できなかった。
あんたは・・傷ついたと想うよ。でも・・詩音も苦しかったこと。知ってほしかった。
だからあたしは・・話したの。」
羽音がすこし、
なみだぐんでるのがわかった。
強気なメガネのおくが
やさしく緩む。
「あんたに何かしてほしいとかじゃないの。
あたしは・・詩音が大切だから。不安定な姉。優しい姉。
あの子が大好きだったあなたに誤解されたままじゃ嫌だから。」
まっすぐ慎吾をみつめる羽音。
「俺は・・藍子に逃げた。
優しい藍子に甘えたんだ。」
頭を抱える慎吾。
「藍子といると気が楽だった。詩音といると・・息が詰まりそうで。
好きなのにそばにいたいのに
詩音はどこにいるのかわからなくて。
疑ったりして。
でもその原因をつくってたのは俺だったんだ。
好きだとか守るとか言ってたのに・・
情けない。」
苦しかった。
情けなかった。
俺は・・
これからどうやって生きていけばいいんだ?
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