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なんとなく訪れた公園で
のんびりと歩きながら。
『だからさぁ、なんか、ぎゅうーってなって、ふわーッて感じになるじゃん!』
君はさっきからずっと、身振り手振りで、何かを伝えようとしている。
俺たちの目の前には、柔らかな新緑が広がっていて
ほんのりと甘い花の香が、風に揺られていたりして。
ああ、もうすっかり春だねえ、なんて会話の中。
正直、雰囲気は伝わらないでもない。
でもあえて、俺は言う。
「わかんないよ、それ」
『なんで?わかるでしょ!ほらもっとこの景色を見て!風を感じて!』
「見てるよ、さっきから。きれいな新緑だし、いい香りの風も感じてるけど」
『だから!ぎゅーって!ふわーって!』
もはや涙目の君が可笑しくて、俺はクツクツと笑った。
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