新緑

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笑う俺を見て少し満足したのか、君も笑顔になった。 でも、ちょっとまって。 まだ伝わってないんだけど… 「何、満足気な顔してんのさ」 『んーん。なんか、ふわーってなったから、もういいかなって!』 「ふわーって」 『うん。さっきのふわーっとは、また違うんだけどね!』 「んふふ。もういいよ、なんか面倒くさい!」 笑い合って、並んで歩く。 しばらくの沈黙があって、俺は独り言みたいにつぶやいてみる。 「俺があなただったらいいのになあ」 君は、なんともいえない顔をして、俺を見た。 『俺になりたいの?なんで?』 「あなたの感覚でこの景色を見たら、わかるのかなあって」 君は立ち止まって、今度はちょっと真剣な顔をした。 俺は、君をなるべく不安がらせないように、声のトーンに気を使いながら言った。 「あなたのぎゅーっとかふわーって、なんとなくわかるよ。 でも、俺がわかったつもりのぎゅーっとかふわーっとは、本当は違うかもしれない」 『うん、そうだね』 「だから、俺の目で見たこの景色は、あなたの見てる景色とは違うかもしれない」 『うん?どうして?』 同じとこから見てるじゃん、と言って君は、俺の隣で身をかがめた。 俺の目線の高さに合わせてみたんだろうけど、そういうことじゃないんだ。
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