282人が本棚に入れています
本棚に追加
笑う俺を見て少し満足したのか、君も笑顔になった。
でも、ちょっとまって。
まだ伝わってないんだけど…
「何、満足気な顔してんのさ」
『んーん。なんか、ふわーってなったから、もういいかなって!』
「ふわーって」
『うん。さっきのふわーっとは、また違うんだけどね!』
「んふふ。もういいよ、なんか面倒くさい!」
笑い合って、並んで歩く。
しばらくの沈黙があって、俺は独り言みたいにつぶやいてみる。
「俺があなただったらいいのになあ」
君は、なんともいえない顔をして、俺を見た。
『俺になりたいの?なんで?』
「あなたの感覚でこの景色を見たら、わかるのかなあって」
君は立ち止まって、今度はちょっと真剣な顔をした。
俺は、君をなるべく不安がらせないように、声のトーンに気を使いながら言った。
「あなたのぎゅーっとかふわーって、なんとなくわかるよ。
でも、俺がわかったつもりのぎゅーっとかふわーっとは、本当は違うかもしれない」
『うん、そうだね』
「だから、俺の目で見たこの景色は、あなたの見てる景色とは違うかもしれない」
『うん?どうして?』
同じとこから見てるじゃん、と言って君は、俺の隣で身をかがめた。
俺の目線の高さに合わせてみたんだろうけど、そういうことじゃないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!