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カラン
何か硬いものが地を打つ音が聞こえたが、まったく気にする余裕がない。
仲間の弔いだといわんばかりに飛んできた蜂の巨大な針をよけて、目を潰す。
「キシャャアァァ!!」
奇声を上げて、あちらこちらを手当たり次第に攻撃し始める。
仲間同士で同士討ちすらし始める始末。これでこの戦場は俺の手の内になった。
皮切りに混戦になり始めたのを遠目で見ている俺。ま、俺としては全員で掛かって来られたらお陀仏だからありがたい。実際はこれを予想していたんだからな。
胸を一突き。動くことを止めた死骸を盾に。脳天をかち割るべく一撃を繰り出す。
攻撃を避けて、弾いて突いて殴って殴って突いて――。永遠にも感じられる攻防を繰り返す。
ガサガサ
木々がざわめく音がする。草むらで何かが蠢いているような感覚すら覚えた。
死と直面した人間にはこういう世界が見えているのかと思う。だが今は浸っている余裕すらない。
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