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あと一匹。やっと追い込んだ。周りには息絶えた巨大蜂の死骸があちらこちらに転がっている。
片方の羽をもぎ取られて、相手も自分も満身創痍も良いところだ。
俺は右手を振り上げる。俺も少なからず体力も消費しているし、傷だって受けている。だけどこれで終わりだ。
体がだるいけど‥‥もう少し。もう少し――。
ハッとして、体を右側に傾ける。途端に鋭い痛みが走った。
左肩から生える、銀色に鈍く光る針。あのまま体制を変えなければ、心臓を突き破られていただろう。
右側に刺さっていたなら心臓ではなくとも、内臓や肺を突き破られていた。左肩も大動脈が近いので非常に危ないのだが、背に腹は変えられないだろう。
しかし状況は思わしくない。今の一撃が今、目の前に迫って来ている巨大蜂の針なら良かったのだが。
どうやら勝つためにもう一匹が死んだふりをしていて、一矢報いられた。不覚にも深い傷を負ってしまった。
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