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私の意識は母の腹の中で目覚めた
隣りには私と同じ姿であろう者がいた…
普通は双子として生まれるべき命なのだろう
しかし、私達の種族にはそれは無い
体を捩じり彼に向かい合った
彼も既に意識があるのだろう
私に牙を剥いた
そして私の体に喰らい付く…
血が吹き出る…
赤く赤く…
母の体内を血で染めあげ血潮が抱擁の様に体に絡み付く…
その時は私に本能が命令した
喰らえ喰らえ喰らえ喰らえ…
頭の中で打ち鐘のように反響する…
私は体を捩り彼の牙から逃れ
そして、彼の眼に牙を突き立てた
眼からはドロドロした水晶体が流れ出し体は大きく痙攣している…
彼の意識は闇に墜ちたのだろう…
私は彼から牙を放し再び喰らい付く
腹を引き千切り腸や肝臓と…
強引に内臓を引き摺り出し全てを喰らった…
気付いたら彼はただの小さな肉塊だけになっていた…
動く事なく、考え、眠り、未来は既にもう無い…
しかし、今私の中に確かに交わった
しばらくして私は赤い血の闇から大海に生まれ落ちた…
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