ある、雨の夜に。

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僕の唯一の楽しみ。 立ち寄った画材店の棚に並べられた油絵具を吟味するこの時間。 気になる色のキャップを開けて、その彩りを確かめる。 カンバスのせられたその絵の具がどんな輝きを放つのか…その瞬間をイメージして胸が高鳴るんだ。 それは「恋」なのかも知れない。 今夜もカンバス生地と「恋」した絵の具を買い込んで、小雨が降る夜の街へ歩き始める。 ♪♪♪…。 不意に携帯が鳴った。 画材を小脇に抱えて、画面に表示された名前を確かめる。 美郷…だ。 僕の唯一の親友。 バイトも休みだし、今夜はゆっくり創作に没頭したかったのに。 「もしもし…。」 「テル?今から遊びに行って良い?」 少し、鼻声。 また彼氏と何かあったのかなぁ。 嫌だなぁ…また徹夜で愚痴を聞かされるに違いない。 仕方なくタクシーを呼び止めてオンボロアパートへと急いだ。
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