約束

3/5
前へ
/33ページ
次へ
どのくらい泣き続けていただろう…? 時間の感覚はなかったけど、随分長く泣いていた気がする… 私はもう一度母の顔を見た。 母は眠っているようで、揺らせば起きるのでは?という、なんとも都合のよい事を何度も思ってしまう。 そして私が母の亡きがらを揺らそうとしたとき、パタパタと足音が近づいて来た。そして、母が寝かされている部屋のドアが勢いよく開き、男が一人入って来る… ――――父だった。 私の泣き腫らした顔を見て、父は息を詰める。 そしてベッドに寝かされている母に近付いていった。 「…正美、正美?俺だよ、わかるよな…?――っ、正美!!」 父は狂ったように母の名前を呼び続け、私は父の横に立ったままその様子を見ていた。 私の中の感情が冷たい物へ変わってゆく―― 悲しみに満たされていた私の心は、父への怒りに満たされてしまった…
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加