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寄り道先は、学校からは見えない狭い丘。
そこには大きな桜の木があった。
奈緒は小さい頃、母が病弱な為に父に連れられて母の入院している病院によく通っていた。
その時に母のいる部屋から見えたのが、この桜の木だった。
そして、家族3人での最後のお花見の場所でもあった。
だから、奈緒は時々こうして訪れては桜を眺めていた。
―父はすぐに母の後を追うように死んでしてしまった。
病名は母と同じだった。
ただ、私に多額の遺産と、一人では大きすぎる家を残して。
「もう、3年…になるのか…。」
独り言は桜の花びらに溶け込むように消えていき、奈緒は静かにその場を去った。
その桜の木の上に、人がいたなんて知らずに。
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