《Missing mist》―〈ツギハギの女〉

10/20
前へ
/390ページ
次へ
他の色は一切無く、一見すれば何の事か分からないであろうが…秀明はそれに気づく事ができた。 そして気づいた瞬間秀明の脳は情報を回転させ、その気づきを理解へと昇華させようとする。 人は誰でも気づく事まではできる、問題なのはそこから理解に繋げる事。 たとえ複数の人間が同じ事を知っていたとしても、その意味を理解するのとしないのとでは雲泥の差がある。 その差を今、秀明は己が持てる知識を持って埋めようとしており…それは秀明をより完璧へと近づけていく。 「…おい、さっきからぼーっとして何してんだよ?そんなに時間がある訳じゃねぇんだぞ?」 女の問いに、秀明はゆっくりと自分が辿り着いた事実を語り出す。 「…この世界は黒い壁に覆われているのではなく、四色の世界を重ね合わせた欠陥品…そうですよね?」 「…ふぅん、ちゃんと気づいたか…それから?」 「世界は本当に真っ黒い世界ではなく、四つの世界を重ね合わせた結果…重複させた結果として存在する世界…でしょ?」 秀明の言葉に女は何度も頷き、僅かながらも感心した様子を見せる。 「そう、正解だ。ここは言わば使われた概念の墓場という事だな」 人は己の意志を通す際に、それ特有のカラーを持ってそれを世界に認めさせようとする。 それは大まかに分けて四つの色で表現され、余程突飛な思考で無い限りはこれらの色に分類される…それを敢えて称するなら、『概念色』 この色によって我々の意志は変化を見せ、またそれを貫く時の原動力にもなる。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加