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「墓場って…概念に死なんてあるの?」
「ああ、まぁ明確には死ぬって事はないんだが…概念はその人間が信じてナンボのもんだ。信じられなくなった概念は、消える事なくここに留まる…こう言った方が的を得てるかな?」
女の言葉に、秀明は新たな認識を持って辺りを眺める…すると今まで見えなかったものが見えてくるようになる。
黒い壁だと思っていたそれの所々に、小さくて細い亀裂が何本も走っている。
それらは先程のムラのように虹色だったり、赤かと思えば緑だったりと統一性が無く、まるで夜空に煌めく小さな星のようだった。
秀明はそれらをしばらく見た後、見上げていた視線を女の方に戻す。
「…で、何で僕はこんな世界にいるの?」
「…はっ、そんなの分かりきった事なんだろ?」
…女の問いに秀明は苦々しい顔をし、女から視線を下に逸らすが…それには女の口を閉ざす効果は無かった。
「…あの城島って野郎に潰されかけて、そのまま意識を失ったんだろ?」
…女の言葉に秀明は驚きを見せるべきだったが、秀明は変わらず苦々しい顔をしていた。
秀明の世界は城島によって掌握され、更に意識はノーエンドによって暗い深淵に落とされた。
意識という支えを失った秀明の魂はそのままこの狭間に滑り込み…そして今こうやって仮初めの形を得て女の前に立っているという訳だ。
「…まぁお前が自力で起きればこの世界からは抜け出せる…だがそれじゃあアタイが出てきた意味が無い」
「…どういう事だ?」
秀明の問いに、女は力強い口調ではっきりと答える。
「お前に世界をぶっ潰して貰う」
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