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秀明が目の前の空間に首を傾げて黙考していると、背後からダルそうな声が響く。
「おい、いつまでそうしているつもりだ?とっとと起きろ」
その口調は明らかに男であるが、その声は甲高い女のものだった。
秀明が恐る恐る後ろを振り向くと…そこには異様な格好をした女性が…いや、異様なのはむしろ体の方なのか…
女は白いワンピースドレスに身を包んでいるが、その裾や袖はボロボロで…まるでボロ切れで作ったかのようになっている。
頭には王冠型のアクセサリーを付け、その隙間から覗く髪は白く染まっている。
それは彼女自身の肌にも言える事であったが、純白に輝くはずのその肌は所々が黒くなっていて精彩を欠いている。
秀明がその染みを凝視してみると、それはまるでアザのように女の肌を分断し…必要のない境界線を作っていた。
それはまるで…いや、まさしくその体は古い人形のように―縫い目―がビッシリと走っていた。
秀明は目の前の彼女が人間ではない事を気配から既に察していたが、それでもその姿には思わず目を見開いてしまう。
「…ああん?何ガン飛ばしてんだゴラァ?!」
女は秀明の視線を勘違いしたらしく、逆にその赤い目で秀明を思いっきり睨みつける!
秀明はその威圧感に圧倒されてしまうと思いきや、特に怯えた様子もなく呟いた。
「…別に睨みつけてはいない」
その言葉に女は不快感を覚えたらしく、秀明の胸ぐらをグイッと掴んでその眼光を近づける。
…だがそれでも無反応である秀明に女は呆れ返ったのか、掴んでいた両手を乱暴に離して叫ぶ。
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