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―ガシィ!
「…な」
ならばとばかりに、女は自らの胸を貫こうとしたクチバシをがっしりと掴み…完全にその勢いを殺していた。
そのせいで飛んできた鳥の姿は露になり、それがカラスであった事を女に告げる。
秀明はその行動に驚きつつも、空いていた左手も突き出して揺らぎをもう一つ発生させる。
二つになった穴に秀明が手を添えて霊気を込めると、春に芽吹く種のイメージを思い描く。
そのイメージに秀明が更に別のイメージを加えると、突然二つの穴から無数の種が飛び出してくる!
緑の燐光を纏う握り拳程の大きさの種は二つの穴から交互に連射され、女が逃げる隙をあっという間に無くしてしまう。
今度こそ…秀明がそんな思考をした次の瞬間、それを再び裏切る光景が目の前に展開される。
女は先程捕まえたカラスの首根っこを掴み、それをまるでヌンチャクのように扱い…飛んでくる種を凄い勢で全て叩き落とす!
秀明は悔しそうに顔を歪め、両手に力を更に種を連射するが…女はだんだん秀明に近づいてくる。
種を弾きながらゆっくりと確実に…そして自らの間合いに秀明が入ったのを確認した瞬間、一気に駆け出してカラスを思いっきり振り下ろす!
だが秀明もそれは想定済みであり、その攻撃を受ける前に後ろに飛んで間合いを離してしまう。
間合いが離れたとしても二人の間を行き交う殺気は留まる事を知らず、どちらも相手の出方を伺っているのか動こうとしない。
「…どうした?もう終わりか?ガキが…!」
「…誰がガキだとぉぉぉ!」
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