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女の言葉に秀明は異常な興奮を見せ、その咆哮と共にその背後から何かが躍り出る!
その顔は青い毛の狼だったが、首から下はは暗い緑色をしたカマキリの体だった。
怪魔は躍り出ると同時にその両鎌を振り上げ、女の体を引き裂こうとする。
その鎌もまた秀明が持つ緑の燐光を宿しており、その禍々しき存在に太刀打ちできる存在など…無いはずだった。
―ピシャン!
だがその両鎌は鋭い音を立てて粉々に崩れ、それに合わせてカマキリの体も塵となって消え去る。
しかも女は全く動いておらず、まるでクッキーがあっさりと噛み砕かれてしまったかのようだった。
「…な…バカな…」
秀明は目の前の光景を肯定する事はできず、女の方に視線を向けると…女の姿は明らかな変化があった。
それは女の体を優しく包み込み、そして荒々しく大気を蝕んでいる…赤い燐光。
それは秀明は纏うそれよりも小振りではあるものの、その勢いは秀明のよりも遥かに強いものだった。
「…赤…ノーエンドと…同じ…」
秀明は自分で口にした言葉に戦慄を覚え、慌ててそのイメージを頭から追い出そうとする。
だがそれは明らかな隙であり、その隙を見逃してくれる程…この女は優しくない。
女は一瞬の内に秀明の懐に飛び込むと、間髪入れずにその顎に強烈なアッパーを喰らわせる!
その勢いは秀明の顎を粉々にする程であったが、その威力は燐光同士の衝突によって幾分か弱まったらしく…秀明の体は宙に投げ出されるだけで済んだ。
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