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―だがこの時点で次の攻撃は決まっており、そして勝敗も確定していた。
―ドゴォン!
突然秀明を襲ったのは重力?いや、それよりも重い質量を伴って放たれた…かかと。
ダイナミックな動きに相応しい威力を持って、秀明の体をくの字に曲げたその一撃に…秀明は一瞬意識を失った。
―ビシャァァァン!
そして意識はタールの床に叩きつけられると同時に戻り、秀明を襲った激痛は落下の際の痛みに留まった。
もしもかかと落としの激痛まで感じていたら、秀明の意識は二度と戻らなかったかもしれない。
「…ぅ…」
秀明は霞がかったまどろみを無理矢理引き剥がすと、まだいるであろう敵を視認するためにキョロキョロと辺りを見渡す。
だがそんな事をせずとも女は秀明の前に立っており、秀明はヨロヨロと立ち上がりながら女を睨みつける。
「まだやる気か?何回やっても無駄って分かんないのかね?」
「…くそ」
秀明は悪態をつくものの、目の前の女の強さをしっかりと認識していた。
怒りに身を任せては勝てない、その事実が秀明に重くのしかかる。
「…アナタは一体誰です?ここはどこなんですか?」
秀明はとりあえず冷静になって自らの質問をぶつけるが、女の返答は冷ややかだった。
「普通闘る前にそれ聞けよな…ったく、天才が聞いて呆れる」
「…別に天才を名乗った覚えはありません、いいから質問に答えて下さい!」
憤った声で秀明が急かすと、女はため息を一つ吐いてから答える。
「ここは重複する世界の狭間、私はそれを行き来できる存在」
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