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「…重複する世界の…狭間?」
秀明は矢継ぎ早に放たれた単語の意味が全く分からず、思わず呆けた声で聞き返す。
「…何だよ…そんな説明して欲しそうな顔すんなよ、アタイだってよく分からないんだからよ…自分で理解しろ」
秀明はその発言に思わず抗議の声を上げそうになったが、女の様子からそれが紛れもない真実だと悟る。
仕方なく秀明は女から視線を外して辺りを見渡し、自らが置かれている摩訶不思議な空間を理解しようと頭を働かせる。
…どこを見渡しても見えるのは艶やかな黒のみ、澱みもなく…まるで鏡を見ているかのようだ。
どこにも手がかりを見つけられない秀明は、諦めつつも両目に霊気を込めて再び辺りを見渡す…すると一瞬だが何かがピカリと光ったのが見えた。
「…うん?」
秀明は何かが光った所に目を凝らし、それが何かを必死に確認する。
…すると…それが鈍いながらも鮮やかな虹である事が明らかになる。
「…虹?」
虹はまるで車の排気ガスが溶けた水溜まりのように揺らめき、黒しかない空間で一際目を引いた。
虹は秀明から見て右の方の壁に浮かんでおり、秀明はそちらの方へゆっくりと歩み寄る。
やがて虹は秀明の眼前にまで近づき、秀明はそれを様々な角度から覗き込むが…特に変わった点は、
「…あれ?」
秀明は目の前の虹に違和感がある事に気づき、それは秀明の頭の中ですぐに理解される。
…赤…黄色…青…緑…四色しかない。
そう、目の前の虹はボンヤリとしているにも関わらず…はっきりと四色に分かれているのだ。
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