序章~月と海と人魚の姫と~

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 今にも自殺しようとしている女の子を助けに行って、逆に溺れてる自分ってありえないだろ。  もがいても、舜の360度全てが空虚な海の中。命綱は、さっき掴んだ女の子の手だけ。  その手が強く握り返してきた。 『まあ、大変ですの!?私におつかまり下さい』 「へっ」  ガシッと掴まれた舜の胴体。彼女の柔らかな胸がちょうど腰辺りに感じるほのかな幸せ。  っていうのも一瞬だった。 「ギョワェェェ!!?」  舜の体の腰より上が、彼女によって海面より上に持ち上げられた。  その体勢のまま、彼女の異常とも言うべき脚力で、立ち泳ぎのように波を分け砂浜に急接近する。  海の浅いところも構わず、砂をえぐって突進する。 「もういいから、痛いから、助かったから」 『すいませんですの。大丈夫ですか』  パタッと彼女の力が抜けて解放されたけど、自分を支える気力がなくて海の浅い部分で倒れた。  口に入る海水の塩濃さも、もうどうでもいい気分だった。 「君何者なわけ」  舜はゼェゼェ息を繰り返しながらも、はいずりながら必死で砂浜に上がる。  仰向けにごろんと寝転がって、ぼんやり目を開けたら金の髪の少女がエメラルドグリーン色の瞳を潤ませて、心配そうに自分を覗き込んでいた。
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