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「アルダ……」
玉座の間に、高貴な衣装を纏った女性が姿を現した。
女性の後ろには、クレオーニア伯爵と、その側近であるウエリートン公が控えている。
「母上……」
立ち上がって、アルダはその女性に近付いた。
彼女は前王妃セシリア・イルド・スオーリ・デ・フィルグリーンズ。
アルダの母である。
優しそうな瞳を悲しみの色に染めて、セシリアはアルダを見つめた。
「大丈夫ですか?」
セシリアの優しい言葉に、アルダは辛そうな表情のまま微笑んで見せた。
「大丈夫とは言えませんが、そんなことも言っていられません。
何もせずに、前王の結界に守られた場所だけで怯えるように過ごしているわけにもいきませんし……。打開策を考えねば……」
「そのことなのですが……」
王妃は、アルダのことばを遮るようにして話し始めた。
「希望はまだあるのです」
アルダは、王妃の意味深な言葉に首を傾げた。
「と、申されますと?」
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