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セシリアは、沈痛な面持ちでしばらく黙った後、アルダの様子を窺うように話し始めた。
「アルダ……。あなたは、北の魔女を知っていますか?」
「ああ、北の森に住むという……」
アルダは、それがこれからの話にどう関係してくるのか計り知れず、セシリアの顔を見つめ、取りあえず答えた。
「おとぎ話の中の登場人物ですね」
そう。アルダにとって北の魔女はそういう存在だった。実在しない夢物語の登場人物。そもそも、永遠の時を生きる魔女など、現実味がなさ過ぎて存在を疑うべくもない。セシリアは、そんなアルダの様子に苦笑して、言葉を続けた。
「北の魔女は実在します」
「え?」
アルダは驚いてセシリアの顔を覗き込んだ。だがセシリアはそれには動じず、厳かに話を続けた。
「ここにいる者以外は、誰も知らない事実……
アルダ、あなたに話さなければならないことがあります」
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