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クレオーニア伯爵は、ウエリートン公に周囲に誰もいないことを確認させ、セシリアに軽く頭を下げて話すように促した。
セシリアはそれを受けて、怪訝に首を傾げているアルダにまっすぐに向かい合い、少し緊張した面持ちで話し始めた。
「前王であるあなたの父、ルーファスは、偉大な魔術師でした。
あなたも知っているように、今から20年前、ルーファス王も魔王と戦い、勝利しました。
ですがルーファスは、この城の敷地に結界を張りました。
何故なら、魔王がまた召還されることを知っていたからです。
あなたにはまだ教えていませんでしたが、ルーファスは大きな失敗をしました。
魔王を封じる際、ただ封じるだけでなく、自身が持つ封魔界を開き、そこに魔王を封じ込める必要があったのです。
ですが、ルーファスはそれをし損じました。
魔王は封印されましたが、誰でもまた召還出来る不安定な封印しか施せなかったのです」
それは、国の誰も知り得ない重大な機密事項だった。
アルダの相貌は驚きと共に見開き、その表情は焦りにも似た様子を表し始めた。
「封魔界に封じてしまえば、もうその魔術師にしか魔王を召還することはできません。
次の魔王の復活の時にそれを……と、ルーファスは誓ったのですが、叶いませんでした。
ルーファスは、魔王の復活までに己の命が尽きることも知ってしまったのです」
それは恐ろしい真実の話。
セシリアの口調はとても厳しく、かつて愛した人の苦悩を表現するに十分だった。
そしてセシリアは、今度はアルダに優しく問いかけた。
「アルダ……
前王ルーファスは、そのような予言をすることはできません。
それらを全て教えてくれたのは、ルーファスの師であり友である、北の魔女なのですよ」
自分の知らなかった大変な事実に、アルダは何も言うことができず、ただ、その話を聞き続けるしかなかった。
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