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時には母であり
時には姉であり
友でもあった大切な……
大切な大切なカレンディーナ。
まったく、しょうがないお坊ちゃんだこと。
悪戯っぽい微笑み
からかうような仕草
それでいて、迷った時にはピシャリと叱りつける愛情溢れる厳しさを持った小さなエレメンタル。
オルコアの瞳から、一つだけ雫が溢れてこぼれた。
カレンディーナは、オルコアに生きていて欲しかった。
「魔女様は、カレン様の願いを聞き届けるかどうか、随分と迷われたそうです。魔女様にとってもカレン様は、とても大切な方だったから。
こぼれる二つの命のどちらを繋ぎ止めるか、大変な選択を魔女様は強いられたのです。
でも、カレン様はあなたに生きて欲しかった。だから魔女様は、あなたを繋ぎ止めたのです。だってカレン様は、魔女様にとってとても大切な使い魔だったのですから。カレン様の願い事を選び、お聞き届けになったのですよ」
エディスの頬にも、一粒の雫がこぼれ落ちた。
エディスの脳裏にも、カレンディーナの姿がありありと思い出されていた。
いつもいつもオルコアの傍らにいて、いつもいつもオルコアを気遣っていた……
「大切な、魔女様の使い魔ですもの」
オルコアは、じっとエディスの瞳を見つめた。
それはもう、動揺とは違う色を帯びた視線だった。
オルコアは悲しそうに眉をひそめていたが、やがて安心したようにこっくりと頷いた。
いろんな意味で、安心したのだ。
ここは間違いなくクレオーニア邸で、目の前にいるのは間違いなく……
「そうか……」
自然と呟いていた。
自然と……
口の端が柔らかく上がり、気持ちよく微笑んでいた。
オルコアは、やっと今の自分の状況を理解できたのである。
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