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オルコアの質問に、北の魔女は答えない。
だがオルコアにはそれが、十分な答えだった。
オルコアは、北の魔女を大切そうにそっと抱き締めた。
「母様、長い間、お世話になりました。
ここで学んだ多くのことを無駄にしないよう、励んで参ります」
オルコアがそう言うと、北の魔女はことばに少しの厳しさを含ませて、それでも十分に優しさを保ったまま言った。
「お前の父、ルーファスが為し得なかった大きな仕事。
よいか、封魔界に魔王を封じ込めた時、その時が全ての終わり。
そして、お前は……」
「分かっています」
北の魔女は、オルコアの返事と、その言外の言葉も含めて受け止め、静かに目を伏せた。
「せめてもの助力に、カレンディーナを連れて行くがよい。
お前と契約している使い魔達も、召還して使ってよいぞ」
「ありがとう、母様」
そしてオルコアは、そのまま迷いなくその部屋を出た。
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