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「やめなよ、その人嫌がってるでしょ!」 奏が叫んだ。伸びと切れのある声が吹野を一瞬たじろがせた。 「そうよ、無理矢理そんな事するからよ」 早紀も続いた。奏もそれに後押しされるように続けた。 「ギターは単なる商品じゃないのよ。それはおじさんにとって仕事道具のひとつかもしれないけど、それを弾く人にとってはお金には決して代えられない大切なものなの。ましてやそれが初めて触れたギターだったりしたら絶対手放しなんかしない」 奏は涙目になりながら言った。 「ふざけるなっ」 一瞬だけ歯を鳴らせた吹野が叫びながら奏の胸ぐらを掴む。 吹野の眼鏡ちょびひげ顔が目の前にせまる。 こんな奴にあんな素敵な演奏が邪魔されたと思うとはらわたが煮えくりかえってくる。 「貴様はいったい何なんだよ」 吹野がまた叫ぶ。 その言葉に投げ返したら、確実に殴られると思ったが構わずその迷いを振り払った。
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