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「私はただあの人の演奏を聴きたいだけだ!」
奏は言いきった。殴られてもいいと思っていた。
「このガキィ」
と吹野が腕を振りかぶるように見えた。
―やっぱり殴られ…―奏がそう思った時、回りでいた野次馬から声が上がった。
「そうだそうだ」
「その子のいう通りだ」
早紀が言葉の発端だったようだ。
回りは助けに入ったりはしなかったが、のりはじめた。
「その子を離せ」
「帰れっ」
調子をつけて叫ぶと、皆が乗った。
「帰れっ帰れっ…」
吹野は瞬く間に糾弾された。
ぐっと声が滞り、上がらない。
掴んでいる奏を見たら、眉間にシワを寄せながら涙を浮かべていた。
「ちっ」
と声をあげて奏を離す。
へなへなと奏は座り込んだ。
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