始章

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「よし。終わった」 この女には武者の霊が憑いていた。武者の家族は敵陣に虐殺されたらしい。 だから家族と嬉しそうにしている彼女をねたんだらしい。それと土地柄… 彼女の家が出来る何十年も前の話。茨木ニュータウンの建設が進められた。事業のためだけに,氏神と戦没者を祀る古いボロボロの神社を何もせずに建設会社が壊していたのだ。 「あ。あのこれ~受け取ってください」 「何を?」 「は,初穂です」 「あら,私はいらないと申したのに」 「いえ,これは今回お世話になった神様と貴方への感謝ですから。どうぞ…」 「は,はぁ~分かりました」 なんて礼儀の正しい方なのだろう。正直彼は頭の中でそう思っていた。 この建設事業に関わった業者は全て倒産していた。 これを皮切りにグレンは身近な人だけながらもたくさんの人の相談に乗り,必要な時は祭儀を実行していった。 彼は次第に陰陽師として自分が存在することに誇りを持つようになったのである。 これがグレンの始章であった。image=49158396.jpg
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