room 1

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「香奈、まだ終わらない?」 下校の時間を告げるチャイムが鳴ってから13分。 私はまだパソコンに向かってキーボードを押していた。 叩くなんてリズミカルな動作じゃない。 ひとつひとつ、確認するようにしか文字を打てなかった。 そんな調子だから、パソコンの授業ではいつも時間内に課題終わらせることができない。 友達の由美が、夕焼けを背負ってしびれを切らしたように言った。 「とっくに下校の時間だよ。早くしなきゃ先生に怒られちゃう」 「待って、もう少し」 タイピングゲームをクリアするのが今日の課題だった。 授業時間内にできなかった生徒は、放課後に居残り。 私以外の同級生はみんな下校の時間までには済ませて帰ってしまった。
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