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タイピングゲームは、飛んでいる魔女がだんだん降下していくところを、指定された文字を打ち込んで再び上昇させるというシンプルなものだった。
タイプが間に合わないと、魔女は海に落ちてしまう。
「あーもう!まただ……」
私のタイプが遅いせいで、魔女は数え切れないくらい海に落ちてしまった。
「お前ら、一年生だろ。まだ残ってたのか」
毎朝、門の前に立っている生活指導の先生が教室を覗き込んで叱った。
この中学校に入ってもう半年。
だけど1年生を担当している先生の名前以外をあまり覚えていない私は、この先生の名前もはっきり覚えておらず、なんとなく恐いというイメージだけを持っていた。
「ごめんなさいっ」
由美も同じだったんだろう。
口答えすることもなく、愛想良く笑いながら謝る。
「明日にしなよ…今日は帰ろう」
そう小さく私に言うと、「すぐ帰ります!」と言って、早くと私を急かした。
私もそうしたほうが怒られないで済むと思って、慌ててパソコンをシャットダウンし、二人で逃げるように教室を後にした。
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