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「先生ホントは目いいでしょ。やめなよダテなんて」
これは、ちいさなヤキモチ。
「うるせえ女」
毒をつぶやいた彼の、パソコンに向かう変わらない背中があたしを不安にさせる。
わかってる。あたしそんな立場じゃない。
これじゃウザい女の典型だ。
嫌われてしまうかも。
ああでも、むしろ、いっそ嫌われてしまえたら楽なのに……。
そう思う自分がいる。
どうか手酷く切り捨てて。
ねえ、こっちを向いてよって言いかけて、やめた。
あたし。
どうやら彼がまだ、好きでしかたないのだ。
▼01【じょうずな愛し方】
「せんせ? 寝てるの?」
わかりきったことを、目を閉じた彼の耳元でささやいてみる。
するとちょっとだけうなった後は、やっぱり起きる様子がない彼。
よかった。
あたしは眠っている彼の首もとにそっと顔をうずめる。
「……ナオフミ」
彼の匂い。
苦めのタバコが主成分。
彼に抱きつく代わりに、ベッドシーツを握りしめた。
そしてただひたすら……。
こんなふうにしか、甘えられない。
だってあたし、愛され方を知らない。
「ナオフミ」
「スキ」
「スキ……」
「スキ……」
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