じょうずな愛し方[秋S1]

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  「ねえ、また呼んでたよ。アヤカさん」 あたしの知らない女。 あたしの世界一憎い女。 子持ちで幸せな家庭持ち。 彼の顔がゆがむ。 「もっかい、しよ? せんせ」 「病的だな」 彼は鼻で笑ってベッド脇の眼鏡をとろうとする。 「やめてよ、眼鏡。嫌いだから」 あたしはまた、つい言ってしまった。 だって気づいたのだもの。 古そうなそのフレームについたロゴは、大昔にすたれた女物のブランド。 ねえ誰にもらったの? 「あと一回でいいんだったな?」 冷たい彼の、熱い怒りを感じる。 それに興奮するあたしはたぶん、そうとうイっちゃってる。 ▼02 あれは秋の日の午後だった。 視覚を刺激する。 外で枯れた葉の落ちる、窓が背景で。 嗅覚を刺激する。 たくさんの薬品の混ざった匂い。 鮮明に記憶へ焼きつく。 彼のテリトリーは独特だった。 ――失礼します。 『はい、いらっしゃい。ハジメマシテー。一年生? そこの来室届け書いてネー』 ずっと憧れていた保健室の先生。 淡い茶髪とタバコくさい白衣。 よく似合う、黒い縁のメガネ。 その独特な存在感にただ、ほんの少し近づきたくて。 ――初めましてじゃないよ。ねえ大沢先生、“アヤカさん”って誰? 先生の恋人?  
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