時刻 ( トキ )

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      「おかしい…」   策を練っていた智将 毛利元就は、今まで自分が闘っていた豊臣の艦隊が、突然にその姿を消し始めたのを耳にした。   勿論、自分の指揮する毛利水軍に自信を持っていたので、豊臣が恐れをなしたのか、とも考えた。 しかし、それにしては唐突過ぎる。   おかしい。どう考えても不自然だ。   そう考えていた元就の脳裏には、ある男の顔がちらついてはいたが、策を練るのには邪魔なだけだと自分に言い聞かせ、首を振って脳内からそれを掻き消した。     きっと自分の策が成ったのだろう。   そう、自分に言い聞かせて。         それでも尚、各地での豊臣軍の突然消滅の情報は後を絶たず、元就自身の考えにも、亀裂が入り始めていた。     まさか。 そんなはずは。         そうして何ヶ月かが過ぎたある日、今度は豊臣軍勢の勢力の巻き返しの情報が届いた。   確かにこのタイミングでの巻き返しは正しいだろう。 しかし、それ以前の唐突な劣勢は、一体何だったのだろうか。   終わらない思考がぐるぐると元就の脳内を駆け巡る。   掻き消した思考までもが蘇る。             ぐるぐる ぐるぐる 何も 何も 解らない          
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