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「こんのバカバカっ早く来なさいよ!」
携帯電話が振動する程の罵声を飛ばすあかねはかなり興奮しているようだった。
「来なさいよってドコ行きゃいいんだよ」
しかし、返事は返って来ずに悲鳴が返って来た。
「きゃあっ……こんのクソがぁ!」
だが、あかねの悲鳴は一瞬にして怒りの叫びに変わり、受話器の向こうからは何かの悲鳴や鈍い音が聞こえる。
「いったい」
どごっ
「誰を」
どちゃり
「襲ってんのか」
ぼぎり
「わかってんの」
ぶしゃー
それらのおぞましい音が止むとあかねの荒い息だけが聞こえるようになった。
やはりあかねは宇宙人に襲われたのだろうか。
もっとも、返り討ちにあって宇宙人はその儚い生命をあかねに根こそぎ捻りきられたのだろう。
「おい、大丈夫か」ケガ一つないだろうが、一応質問してみる。
「大丈夫なわけないじゃん!さっき二匹の宇宙人に囲まれてピンチだったんだからね!」
宇宙人の方がピンチだったのだろう。
「とりあえず、浦峰中央病院に来て。あたしは今病院の駐車場にいるから、竜二もここで合流しましょう」
「わかったよ、でも病院はどんな感じなの?」
竜二は支度をはじめながら尋ねた。
「最悪よ、もう!宇宙人が逃げ遅れた患者を人質にとって籠城してるらしいのよ。一応警察が来てるけど、まだ手出しできないみたいよ」
「かなりヤバいじゃん」
「何言ってんの?チャンスじゃない!ヤツらを皆殺しにすれば、市役所からの報酬と警察からの金一封が手に入んのよ」
鼻息荒く力説するあかねのテンションは最高のようだ。
テンションだけでなく、攻撃力も飛躍的に上がっているに違いない。
あかね1人で大丈夫なのでは……?
竜二の頭にそのような考えが一瞬だけ浮かんだがそれはすぐにかき消された。
もし、あかねを手伝わなければ恥ずかしい過去の秘密を暴かれてしまうからだ。
「じゃあ竜二早く来なさいよ!病院に着いたら電話してね、じゃ」
あかねからの電話が切れた後に竜二はため息をついた。
玄関の金属バットを片手に自転車でフラフラと病院へ向かう竜二だった。
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