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真っ赤な鳥居にもたれかかり竜二は額の汗を拭っていた。
ギラギラと肌を刺す日光とうるさい蝉の声が余計に暑苦しい。
バットを握る手に汗が伝い体力も汗と一緒に流れていくような気さえした。
「マジあちぃー……」
昨日の晩に野球をしようと瑛司からメールがあり神社で待ち合わせするはずだったのだが、やつはなかなか来ない。
既に約束の時間から30分以上が過ぎているのに瑛司どころか他のやつらも一向に現れない。
「ああ゛もう帰るわ」
竜二がバットを肩に載せて振り返ると瑛司がいつの間にか鳥居の向こうに立っていた。
「お前おっせぇよ、来んのがさぁ!」
瑛司に歩み寄る。
「何してたん?寝坊とかだったら許さんからのぉ!」
しかし瑛司はその場から動かずただ立ち尽くしていた。
「おい、きいてる?」
竜二は不審に思い歩みを止めると今度は瑛司がうねうねと歩み寄って来る。
「ちぎちぎちぎ…ちぎぢ」
何歩か歩くと瑛司はその場に倒れてしまった。
「…瑛司?ふざけんなよ……」
竜二がジリジリと近づいた瞬間だった。
瑛司の背中が割れて紙粘土で作った人型の怪物が現れた。
突然のことに驚いた竜二は怪物が近づくまで動けなかった。
その隙を突いて紙粘土の怪物は竜二の腹を蹴り上げる。
後ろに飛ばされた竜二は息が止まりそうになったがなんとか耐えていた。
「マジ最悪だ、宇宙人かよ」
「ちぎちぎちぎ」
紙粘土はゆったりとスキップするような歩き方で近づいてくる。
「うわぁヤバいじゃん」
もちっもちもち。
紙粘土の足音が近づく。
「ちぎちぎちぎ…」
竜二がその場から逃げ出すと、紙粘土もスキップしながら追って来る。
鳥居を抜け、階段を上り必死で逃げて辿り着いたのは神社のお堂の前だった。
「ちぎちぎちぎ…ちょちょちょ」
息も絶え絶えの竜二を見て紙粘土は笑っているようだった。
もちっもちもち。
スキップしながら近づく紙粘土。
これ以上は逃げられないと思った竜二は手に持ったバットを両手で構える。
意を決して紙粘土走り寄り頭と思われる部分にバットを振り下ろした。
為す術もなく怪物は腹まで半分に避けてしまった。
しかし内臓が溢れ出すワケでもなく、ただ紙粘土が詰まっているだけのようだった。
その場に倒れて動けなくなった紙粘土。「ち、ぎぎぎ」
竜二は容赦なくバットを振りおろし、ついに紙粘土に勝利したのだった。
「は、しゃらくさい!」
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