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  「うーむ、せっかくだから、同時に二人の男からの文を届けよう。  頭中将、そなたも一首詠んでくれ」 「妹に恋の歌を、ですか!?」 「そうなるが、他人を巻き込む訳にもいかんしな。」 「東宮から頂くお文にこそ、妹は喜びましょう」 「そうなのだが、入内の日程が決まる前に、姫へ文を贈るべきであった。私の不徳の致すところだ。  入内直前に真摯な文を贈っても間が抜けてるというもの。余興に取り紛れさせて恋心を告白する方が、かえって真実味が増すこともあろう。  愛しい姫へ文を贈り損ねたこの間抜け男を助けると思って、協力してはくれぬか?」 「そのようにご自分を卑下なさらなくても…承知致しました。私も歌を詠みます」  東宮のへんてこな理論に抵抗する言葉も思い浮かばず、頭中将は東宮に従うしかありませんでした。  
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