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   頭中将(トウノチュウジョウ)は、間もなく東宮(トウグウ)の元へ嫁ぐ妹姫の部屋を訪ねました。 「御息所(ミヤスドコロ)様にはご機嫌麗しゅう…」 「兄様、おやめ下さい。せめて邸にいる間は妹としてお話させて下さいませ」 「すまん、すまん。悪かった。  それで、入内(ジュダイ)の準備は進んでいるかな?」 「万事ぬかりなく整いましてございます」 「や、乳母殿のお耳に入れるべきでない愚問であった。申し訳ない」 「いえ、こちらこそ謝罪のお言葉、痛み入ります」 「それより兄様、お時間がおありなら、碁のお相手でもして下さらないかしら?」 「姫こそ、そのような時間があるのかい?」 「周りの皆は忙しいのに、私自らすることは何も無いんですもの。もう、退屈で退屈で」 「そういうものなのかね、間もなく嫁ぐ姫の日常は。  まあ、良い。では一局」  
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