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その三日程後。
「姫、姫、大変なことになった」
いつも先触れの女房を寄越す頭中将が、何の予告もなく、姫の部屋へ飛込んで来ました。
「兄様、そんなに慌てていかがなさいましたの?」
「姫宛の文を預かってきた。しかも二通だ」
「まあ!」
入内が目前に迫っているのですから、そのような文は、無視して打ち捨ててしまっても構いません。
むしろその方が、東宮に対して礼を失することにはなりません。
しかし、何事もわきまえている筈の姫が、好奇心に負けてしまいました。
「兄様、お文を拝見させて下さい」
「返しをもらって来るよう、きつく言われておるのだ。いかが致そう?」
頭中将はおろおろしながら、立派な文箱(フバコ)と、懐から取り出した草花に結び付けた文を、姫に手渡しました。
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