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しかし、あたしは言った。
「ごめん、それはやらないことにしてるから」
「……はい」
あたしの言葉に彼女は首をうなだれて返事をした。
そのまま諦めたように武器を置くと、脱力したように床に座り込んでしまった。
「それまでっ! 勝者、シュリアァァァァァっ!」
審判の男が叫んだ。
それと同時に、ワラワラと闘技場の脇で待ち構えていた男たちがリングによじ登っていく。
悲鳴はなかった。
自分に群がってくる男たちを、いったい彼女はどんな目で見ているのだろうか。
絶望の淵に立たされたとき、少女の純粋な瞳には何が映っているのだろうか。
「ゴメンネ」
あたしは小さくため息をつくと、男たちの奇声を背にゲートへ戻って行った。
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