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「ひひひ、諦めんぞ」
聞こえないふりをし、あたしは門をくぐっていく。
そのあたしの後ろ姿をいつまでも気持ちの悪い視線がまとわりついていた。
通路を抜けると、螺旋状の大階段が上へと続く大広間に出る。
その途中途中に階が設けられ、奴隷の入る部屋があるのだ。
基本的に1部屋5人だが、あたしのような上級奴隷は1人1部屋である。
しかし、悲しいことに部屋の位置は最上階である6階に位置している。
階段を上がるのが辛いのなんの……。
「あ~ら、もう終わったの? つまんないの」
4階に差し掛かったところで、近くの部屋から1人の女が出てくる。
それを見て、黙ってあたしの前を歩いているハリスが静かに頭を下げた。
華やかなブロンドの髪に、妖艶な顔立ち。男の視線を飲み込みそうな身体つき。
その人気は3本指に入るといわれている赤薔薇のセフィーナとは、彼女のことである。
しかし、あたしは彼女が嫌いだった。
みんな辛い思いを抱いてここにいるのに、この女の雰囲気は場違いなほど明るい。
それに、あたしはこの女の趣味が嫌いだった。
「……また遊んでるわけ」
「そぉよ。いただいちゃった」
セフィーナはそう言いながら人差し指をペロリと舐めた。
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