愛を知らない音

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「ふぅ……ご馳走様でした」 僕は注文した唐揚げ弁当を食べ終えた。 そして1人で手を合わせそう言うと、1人暮らしには丁度良い広さのアパートの部屋に響いた。 何故僕が目が見えないのに1人暮らしをするかと言うと、僕が生まれて直ぐに母親が亡くなってしまい、その後、直ぐに父親が病気の為亡くなったらしい。 そして僕を引き取ったのは親戚の叔父さんと叔母さんで愛情も無く育てられ、両親が亡くなったのを聞かされたのは10歳の頃だった。 それまで叔父さんと叔母さんを親だと思っていた僕は、顔も声も知らない両親の死を他人が亡くなった位にしか思えなかった。 更にそれと同時に両親だと思っていた親戚の2人から愛情を感じられないのに納得がいき、自分の中で何かが無くなった喪失感だけが残った。 そして時は過ぎ、目の見えないまま中学校へ入り、入学初日の自己紹介で自分に障害があることを伝えると次の日から話し掛けてくる人は居なくなり、その次の日からはイジメも始まった。 そんな日常が続いて、精神的に参っていたある日。
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