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よく整理された、言い換えればあまり物がないエリアの部屋を軽く箒で掃く。
本棚の埃を払い、机を見るアレン。
「……ん、これ……ねぇ、ミーア。」
「はい?なんですか?」
床を拭いていたミーアが顔を上げる。
「この木の棒って何?」
アレンは机の上に置いてあった棒を手に取り、ミーアに見せる。
昨晩、あのお嬢様に脅された時に突き付けられたもの。
握りやすく削られていても、やはりただの木の棒にしか見えない。
「ああ、それは杖ですよ。エリア様が使われているものですね。」
アレンから受け取り、彫られた名前を確認し、頷く。
「それで魔法ってのを?」
「はい!かっこいいですよね……」
うっとりと握った杖を眺めるミーア。
「杖には大小がありまして……大きいタイプは強力な魔法が使えるんですが、重いですし、体力と精神力の消費が激しいんです。重いですし。」
指を立てて説明するミーア。
「比べて、この軽量タイプは見た目通り軽さが特徴で、詠唱時にあまり消耗もしません。おまけに腰に差して持ち運びできるという便利さ!」
説明するミーアの声が楽しそうに跳ねる。
「あまり運動がお得意でないエリア様にも扱いやすい杖ってことです!」
「へぇ……物知りなんだね。」
「……一時期本気で入学を目指して勉強した頃がありまして。少しなら魔法も使えるんですよ?では、ちょっとお借りして……」
何かを詠唱し、杖を振り上げる。
「……ファイア!」
小さな火の玉が杖の先から現れ、空中に消える。
記憶がないせいか、目の前で見せられても原理がさっぱりわからない。
「おぉ……すごい!」
「えへへ、それほどでもないですよぅ……」
アレンに褒められ、照れながら頬を掻くミーア。
「でもどうしてエリア様の杖が………あっ!ま、まさかエリア様がお忘れに!?」
ミーアが慌てて窓の外を見る。
馬車が出発してからすでに半刻ほど経過している。
もちろんエリアを乗せた馬車はもう見えない。
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