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得意げに説明していたミーアの表情が焦りの色に変わる。
「た、大変です!!どどどうしましょう!?」
「まあまあ、落ち着いて。」
アレンが肩を抑え、落ち着くように促す。
「その学校ってのはあの道の向こうにあるんだよね?」
「え、ええ。道の先のゼリアルという街にあるんですが……馬車もないし、困ったなぁ………」
ミーアはわたわた慌てながら部屋を行ったり来たりしている。
「じゃあ、俺が行ってこようか?」
ミーアから杖を受け取り、軽く振る。
「で、でも……結構離れてますよ?徒歩だと片道で3時間くらいはかかっちゃうかと……」
「まあ、別に予定があるわけでもないしさ。風景とか街とか見れば、もしかすると何か思い出せるかもしれないし。」
「そうですか?……じゃあお願いします。」
「ああ。それじゃっ!」
エリアの部屋を出て、アレンが走り去る。
(なんて優しい方なのかしら……)
「お?アレン君、どこ行くの?早速サボりかい?」
玄関の掃除をしていたミネルバが声をかける。
「違いますよ!忘れ物らしいんで、学校まで届けてきます。」
「あら、頼もしい!街に行くなら親切ついでにお使いを頼まれてれないかな?」
「別に構いませんよ。」
「助かるわ!え~っと………」
羊皮紙に羽ペンを走らせ、アレンに手渡す。
買うべき食材がリストアップされていた。
「こんなもんかな?はい、あとお金も。お釣りはちゃんと持って帰ってくるのよ!」
「子供じゃないんですから……それじゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃ~い!」
ミネルバに見送られ、アレンは外へ出た。
草原に伸びる一本道の上を軽快に走るアレン。
傷の痛みも軽く、思ったよりもいいペースで走れている。
(うーん、豊かな農村って感じかな。)
道の周りにはポツポツと民家や畑がある。
農作業を始めていた人達がアレンを見つけて声をかける。
「やぁ、兄ちゃん見ない顔だな?旅人さんかい?」
「ま、まあそんな感じで……今はドーアさんの屋敷にお世話になってます。」
「へぇ、領主さんとこに!あの人には本当に俺らもお世話になってるからねぇ。街へ行くのかい?気をつけてな!」
「ありがとうございます!」
気さくに話しかけてくる農家の人々。
どの顔も柔らかく、暖かい笑みをアレンに向けてくれた。
人々の声に後押しされ、目の前に続く道を再び走り出した。
まだ結構距離がありそうだ。
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