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「あ、エリア!さっきの時間どうしたの?無断欠席なんて、真面目なあんたらしくないじゃない。」
昼下がり、噴水のある広場でベンチに座るエリアに話しかける女子生徒。
「あ、アメリア!ちょっと聞いてよ!」
「はいはい、どうしたのよ?」
アメリアと呼ばれた生徒はエリアの横に腰掛ける。
赤い髪は短く切り揃えられ、髪と同じく赤い瞳がエリアを見つめる。
その背中には槍を背負っている。
エリアとはまた系統の違う美少女である。
「お父様がね、海岸で人間拾ってきたの。」
「人間?そりゃまた……」
「傷だらけでお父様に拾われてきて。平民のくせに非常識で、無礼で、私に向かって童顔だとか胸が………」
「胸が……なに?」
隣で聞くアメリアの胸を見る。
決して大きくはないが、標準ほどの膨らみはある。
「……なんなのよ!もうっ!」
「わけわかんない……」
膨れるエリアに首を傾げて苦笑する。
「……でね、記憶喪失してるらしいの。そいつ。」
「へぇ?そうなんだ。大変ね。」
「お父様の寛大さのおかげでしばらく面倒見ることになったけど……いい迷惑だわ!」
「別に普段は寮生活なんだから迷惑なんかないじゃない………で、それとサボりにどういう関係が?」
頷きながらも核心を突くアメリア。
「……魔法の授業だったじゃない?」
「あんたの大好きな風魔法のね。」
「昨日、私の精神は引っ掻き回されたのよ。ぐっちゃぐちゃにね。」
「んで?」
沈黙するエリア。
「………杖を忘れたのよ。」
「……ぷっ、くっ……あっははは!!学校に杖持ってこないって何しに来てるのよ!」
大笑いのアメリア。
エリアは俯いて悔しそうに唇を噛む。
「あんたって魔法は優秀だけど運動はダメで、努力家だけどどこか抜けてるのよね~!」
「……悪かったわね。」
アメリアの指摘に悔しがって赤くなる。
「おまけに口悪くて素直じゃないし。かっとなるとすぐに手が出る!」
「……う、うるさいうるさいっ!」
「しかも朝に弱いし夜にも弱い。お酒にも弱い!この前のパーティーだって――」
「やめてって言ってるでしょっ!!」
エリアが一際大きい声で叫ぶ。
周りを歩く他の貴族学生が何事かと振り返った。
「ああ~……ごめんごめん、私が言いすぎた!全部嘘!嘘だから!」
言い過ぎたと気づいたアメリアは慌てて取り消すも、時すでに遅し。
「もういいっ!!」
走り出して寮の方向に消えるエリア。
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