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アレン達が南の砦を落としてから数時間。
日が暮れようとしていた。
お互いに睨み合いを続けたまま硬直状態が長引く。
「……はぁ、動きがないわね。」
『だな。ふぁ~あ……』
『……そうね。』
『………ああ。』
レティスは城に長時間待機していることに疲れが出てきている。
答えるイアンの声も疲労感に満ちていた。
感情が見られない返答は自陣北側のシェイラと南側のマーレイだ。
『……そろそろ休もうかしら。うちの隊はみんな疲れてるだろうし。』
シェイラが呟く。
『アレン達にはまだ警戒してもらってるけど……これからしばらくは作戦行動はないよな?』
「……そうね。しばらくは警戒度を軽にして、全軍休息ってことで。余裕があれば城から物資の輸送をお願いします。」
「……休息の指令が入った。分隊から数人を城からの物資輸送にあててくれ。残りの生徒は夜に備えて休んでくれってさ。」
「よし、了解だ。」
イアンから連絡内容を聞き、アレンは分隊の生徒を集める。
進攻作戦で怪我を負った生徒、疲れて眠そうな生徒など、総勢17名が集まった。
「これからしばらくは休憩になる。……誰か俺と一緒に物資輸送を頼めないか?城から火薬と武器と兵糧を運ぶだけなんけど。」
『だけ』という部分を強調したが、体力的に大変な作業ということは隠せていない。
お互いに顔を見合い、その疲労からか有志の手はなかなか挙がらなかった。
「……もう、みんなだらし無いわね!私がやる!」
アメリアが元気に手を挙げる。
「わ、私も!……あまり役には立てないかもしれないですが………」
ミーアも怖ず怖ずと手を挙げた。
「よし、じゃあ俺とアメリアとミーアで城に戻る。各自休息をとっといてくれ。」
3人は荷台の着いた台車を転がしながら東にある自城を目指した。
「道が悪いわね。車輪が跳ねちゃう。」
「お、重いですね……」
アメリアとミーアが必死で台車を引く。
橋を渡ってからは砂利道が続き、スムーズに車輪が回らなかった。
「………辛くなったら代われよ?帰りもあるんだからな。」
「このくらい、大丈夫………ね、ミーア?」
「………はい!」
2人とも指揮する立場のアレンを気遣ってなかなか代わろうとしなかった。
アレンは2人の想像ほど疲労していなかったが。
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