両校交流戦、秋の陣~後編~

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やがて3人は先ほどまで拠点としていた自陣南側の砦に着く。 「……大丈夫か?」 「大丈夫だってば……ねぇ?ミーア……」 「は、は……い………」 2人とも意地になっているのか荷台の持ち手を離れようとしなかった。 (……参ったな……休息させないと………) 「……俺は変わったことないか聞いてくるよ。待っててくれ。」 「……了解………」 「了解……です。」 肩で息をする2人を背中に、アレンは砦の中に入った。 砦は数時間前まで自分が守っていた場所なので迷うことはない。 しかし、人の少なさが異様とも言える静けさを放っている。 (少ないっつうか………誰もいない?) 階段にも廊下にも、生徒の姿はなかった。 不安に重いながら指令室に入る。 「………アレンか。」 「えっと………マーレイか?」 「ああ。」 椅子に座って腕を組むその姿はとても学生には見えない。 本物の将校のような雰囲気に思わず敬語になりそうだった。 「何かあったのか?生徒がいないみたいだけど。」 「…………」 マーレイは黙って指を2本立てた。 「………ピース?」 「悪い知らせと、もっと悪い知らせがある。」 「あ、ああ。そういうことか。聞かせてくれ。」 頷き、テラスの方に目をやる。 「………向こう側の南砦が攻撃されている。」 「なっ……いつから?」 「十分ほど前だ。抗戦しているが状況は厳しい。」 「………すぐに援軍に向かわないと………!」 慌てて指令室から出ようとするアレン。 「待て。知らせはもう1つある。」 落ち着いた声に振り向いたアレンの足が止まる。 「……今のが悪い知らせか?ということは……」 「ああ。………もう1つある。実は………」 マーレイが初めて表情を曇らせる。 「……クイーンが脱走した。俺の隊に探させているが、まだ見つかっていない。」 「エリアが!?あの馬鹿っ……」 「もし砦が落ちたらクイーンを最優先で守らないといけない。先に見つけ出してから援軍に向かってくれ。」 「……わかった。すぐに捜索する!」 「頼んだ。俺はここで待機する。」
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