両校交流戦、秋の陣~後編~

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エリアを背負ったアレンは砦の2階の一室に入る。 簡易的なベッドがいくつか並んだ、仮眠用の部屋だ。 相変わらず目を覚まさないエリアをそっとベッドに寝かせる。 しばらく様子を見ることにした。 月明かりが差し込む部屋を沈黙が支配した。 「………っ……う……」 「………エリア。」 やがて、少しだけ唸ったのを聞き、静かに話し掛ける。 「エリア、起きろ。」 「………ん、ぅん……」 ゆっくり目を開くエリア。 その瞳がアレンを見つける。 「………アレン。……あれ?ここは………」 「砦だ。お前、穴に落ちてただろ。」 「………あ、そうだ……私、城を抜け出して………」 意識が完全に戻ったのを確認し、アレンがエリアの襟首を掴む。 「な、何!?痛いっ!」 「お前、自分が何をしたかわかってるのか?」 声は荒げず、静かに睨む。 怯んだエリアは目を伏せながら口ごもる。 「あ、あまりにも暇だったからつい……ちょっと散歩するくらいならいいかと思って………」 「その結果みんなにどれだけ迷惑をかけたかわかってるか?」 「………その、………ごめんなさい。」 怒ったアレンに怯えているのか、反省した様子で頭を下げるエリア。 「………俺に謝ってもしょうがないだろ。ほら、みんなのところに行くぞ。」 「………うん。」 会議室にはレティスとフロリスとマーレイ、アレンの代理としてアメリアとミーアが待っていた。 全員が入室したアレンとエリアに注目する。 「………あの、みんな……」 沈黙を破ったのはエリア。 足元に目を落としながら謝罪をしようと口を開いた。 「その……私――」 「やっとお目覚めね。」 レティスが椅子を立つ。 エリアが見つかったと聞いて、城から出てきていた。 「……みんなが頑張って戦ってる時に脱走だなんて、たいしたお姫様気取りね。」 「……あの………」 「おかげで自軍は混乱、せっかく落とした砦も逆に落とされ、イアンはやられたのよ!」 「…………」 徐々に剣幕を強めるレティス。 エリアはただ黙ることしかできない。 「あなたを捜すための人員を援軍に出せたらわからなかったじゃない!!どうしてくれるのよ!?」 レティスが右手を振り上げる。 怒りのビンタが来ることを覚悟し、エリアは目を固く閉じた。
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