両校交流戦、秋の陣~後編~

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振り上げられた手が掴まれる。 「そのくらいにしてやってくれ。」 アレンがその手首を掴んでいた。 「……甘いわよ。」 「さっき俺からもきつく言ったし、こいつも反省してるから――」 「それが甘いって言ってるのよ!」 レティスは思い切り手を引き、アレンの手から自分の手を引き離す。 「あなただってさっきは勝手に進攻なんてして!どういうつもりなの!?」 「勝手にじゃない。ちゃんと相談した上の戦略だ。」 アレンはあくまで冷静に言う。 それでもレティスが怒りを鎮める様子はなかった。 「まずは本部の私に連絡するのが義務でしょう!?もし失敗したら――」 「大変だ!敵軍がすぐそこまで来てる!」 哨戒に出していた生徒が慌てて報告する。 「規模と方角は?」 この状況でも落ち着いているのはマーレイ。 「真西から南の橋を渡ろうとしている!規模は恐らく30人程度!」 「……迎撃ですね。みんなを起こしてきます!」 フロリスが会議室を出る。 「……くっ……話は後ね。すぐに防衛します!各隊装備を整えて出撃!私が砦に残るわ!」 レティスは指示を出しつつ北の砦と城に連絡をする。 「アレン行こう!」 「………ああ。」 固まっていたアレンをアメリアが呼び起こし、急いで外へ出た。 外ではまさに戦闘が始まろうとしていた。 「数はそれほど多くない!すぐに迎撃するぞ!」 隣で重そうな鎧を付けたマーレイの隊もアレンに呼応する。 少数の敵はじりじり距離を詰めてきていた。 「アレン、仕掛ける?」 「よし、行くぞ!」 「オーケー!!」 アレンとアメリアが先鋒として突っ込む。 接近戦に秀でた2人の奇襲を受け、進攻してきた部隊は散り散りになっていく。 「逃がしちゃダメです!フロリス分隊、追ってください!!」 「マーレイ分隊、その場にて待機。指示を待て。」 魔法の得意な生徒の集まったフロリスの隊が森の中へ走っていく。 「アレン分隊、フロリス分隊に続いて追撃だ!各自散開して攻撃!」 指示を出したアレンは辺りを見回し、追撃可能な敵を探す。 森の闇の中に1人の生徒を見つけ、一気に距離を詰める。 「………!?」 剣が届く距離まで迫ると、見えていた人影が掻き消えた。 同時に風の矢が飛んでくる。 なんとか剣で弾くが、敵の姿は見えない。 「………くっ、罠か!?」 砦の明かりが届く所まで飛び出す。 森の中に数多くの気配があることに気づいた。
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