両校交流戦、秋の陣~後編~

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「みんな!戻って来い!罠だ!!」 アレンが声を張るが、同じ大きさで叫ぶ生徒の声が掻き消す。 「アレンさん!どういうことですか?」 「ミーア!隠れてろ!矢が飛んで来るぞ!」 「……マーレイ分隊、追撃に向かった生徒を援護。怪我人は砦まで運べ。」 静かな指示を聞いてほぼ無傷のマーレイ分隊が動き出す。 「マーレイ、多分森の中に倍はいる!大丈夫か!?」 「任せろ。」 短く答え、鎧を鳴らしながらマーレイが森に入って行く。 静けさの消えた夜の戦いはしばらく続く。 「こちら南砦。敵襲を受けました。規模はそれほど大きくありません。」 『増援はいらないわね?』 「ええ。そちらの防衛に徹してください。」 『了解。』 シェイラの冷静な声を聞き、レティスは通信を終えて地図を見上げる。 砦は両軍2つずつを持ち、試合はほぼ互角といったところ。 恐らく攻めてきたのは分隊2つ程度。 後ろに控えていたとしてももう2つだろう。 (…………本気の進攻にしては数が少ないかな……?) 考えられる可能性を挙げてみる。 南の砦を攻めつつ北の砦を……これはシェイラと連絡をした結果ないことがわかる。 ただの偵察……にしては数が多い。 クイーンを狙っての進攻……だったら城を直接狙うだろう。 ここにエリアがいることは知られていない。 (ん………城?) 自分が飛び出してから城はほとんどもぬけの殻。 城へ向かうには3つの橋のどれかを渡る必要がある。 (3つ………真ん中の橋!!) 視界の効かないこの状況で、城へ続く一本道が全くの障害のない格好の進路になっている。 「城が……狙われているかもしれない!」 気づいてから自分の迂闊さに後悔する。 すぐにシェイラに連絡をとろうとした。 「シェイラさん!聞いて!城が危ないかもしれない!!」 『あ、レティスさんですか?エルザです。どうしました?』 「真ん中の橋が空いてるの!空城まで一直線になってしまってる!急いで防衛隊を!」 行軍しているとしたら、城にはすぐに到達してしまうかもしれない。 それでも何とか凌げないかと指示を出していた。 『あ~……そういうことですか……』 「急いで!負けてしまうわ!」 次のエルザからの返答に、レティスは驚嘆した。 『……さっきお姉ちゃん1人で城に走っていきましたよ。『さっきの借りを返してくる』って言ってましたけど。』
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