両校交流戦、秋の陣~後編~

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空になった城はもはや拠点とは言えない。 「エルティズ、進攻するぞ?」 「偵察が帰ってきてからでいいんじゃないか?」 「せっかくのチャンスだ。敵に感づかれる前に行こうぜ!」 (感づかれてる可能性があるから待てって言ってるんだが………) エルティズは5人という少人数で城の手前まで進軍を完了していた。 ルートはもちろん真ん中の橋。 闇に紛れて進み、ここまで敵に発見された形跡はない。 2人を偵察に出し、安全なら城を落として終わらせようという決断だった。 「よし、俺も行くぞ!」 「あ、おい!よせって!」 「大丈夫だって!せっかくなら歴代最短勝利でも目指そうぜ!」 エルティズの隣の生徒が立ち上がる。 もう1人も勇んで前へ出た。 「……十分注意しろよ。」 「敵もいないのに何に注意をするんだ?」 「心配性だな。さあ、行こうぜ!」 エルティズは渋々立ち上がり、2人の後に続いた。 「………なっ……!」 「どうした………!?」 城の手前、倒れている偵察役の姿があった。 胸には氷の矢が貫通している。 「……なるほど、また読まれていたか。」 闇から矢が3本飛ぶ。 「あっ!」 「ぐっ!?」 エルティズ以外が貫かれ、盛大に血を吐き出しながら倒れる。 エルティズは冷静にさばき、矢の発射元を睨む。 「………さっきぶりだな。シェイラさん。」 闇から現れたのはシェイラ。 冷ややかな笑みは夜風のように冷たい。 「何故私だと?」 「魔法を見ればわかる。スピード、正確さ、温度、鋭さ。それに君ならこの奇襲を読んだとしてもおかしくない。」 「あら、ずいぶん高く評価されてるのね。」 「逆に聞こう。何故1人で来たんだい?」 さりげなく周りを見回すが、シェイラ以外の気配は一切ない。 「隊を動かせば砦が落ちるかもしれない。大人数で奇襲とも考えにくい。それに………」 冷ややかな笑みを真顔に変える。 「……あなたとは本気の一対一を楽しめそうだから。」 「………ずいぶん高く評価されたものだな。」 お互いに軽く微笑みあう。 風が草木をざわめかせる。 程よい間合いは、一瞬で詰められた。
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