両校交流戦、秋の陣~後編~

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炎を宿した大剣に弾かれるようにシェイラの体は後ろへ飛び、城壁に衝突する。 畳み掛けるようにエルティズは炎球を飛ばした。 「お姉ちゃん!!」 「エルザ!危ないって!!」 飛び出しそうになるエルザを隣の生徒が止める。 着地したエルティズが砂埃と瓦礫の向こうを睨む。 「………あのタイミングで全身を氷で固めて防いだのか……なんて反応だ。」 手にしていた剣が真っ二つに割れて落ちる。 砂埃の向こうでは全身を氷に変えたシェイラが膝を着いて笑っていた。 「……………っ……」 全身を氷から解き放ち、杖を向けるシェイラ。 しかし、ふらついた足元が崩れ、その場に伏せてしまった。 エルティズは一気に距離を詰めて半分になった剣の先を振り上げた。 「楽しかったよ。じゃあな!」 迫るエルティズを片目で見ながら、シェイラは諦めたように笑った。 切っ先はシェイラの胸の前で止まる。 正確に言うならば、横から来た他の剣に弾かれ、エルティズも同時に後退した。 「………やっと会えたな。」 「そうだな、アレン。」 再会した2人は笑いながら睨み合う。 後ろではエルザがシェイラを抱え起こしている。 「……シェイラが負けたのか………やっぱり、お前はすごいよ。」 「いい魔法だった。この人何者だ?」 「知らないけど………うちでは間違いなく最強の魔法使いだ。」 「だろうな。こんなに危ないと思ったのは初めてだ。」 エルティズはシェイラの様子を眺め、剣の切っ先を投げ捨てた。 「……今のは決闘だな?」 「ああ、多分………」 「だったら、俺から手を出すわけにはいかないな。」 「じゃ、俺は戻るぞ。進攻は失敗だ。やれやれ……」 「次は俺が相手するよ。」 「楽しみにしておくよ。」 短く会話をしながら、背を向けたエルティズ。 「アレンさん!何で逃がしちゃうんですか!?」 エルザがシェイラを抱えながら叫ぶ。 「……決闘は貴族のスポーツだろ?まあ俺にはよくわからないけどさ。ちゃんとルールやマナーがあるんだろ。それより………」 エルザの肩にもたれ、今にも気絶しそうなシェイラを見る。 「シェイラを何とかしてやらないとな。城で治療をしないと危ないだろ。」 「そ、そうですね!お姉ちゃん、しっかり!!」 城に入り、横たえたシェイラはまだ朦朧としている。 意識はほとんどないように見える。 援軍の生徒を集め、急いで治療を始めた。
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