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エルティズが城へ奇襲してから数時間、お互いの軍は微動だにせず、朝を迎えた。
「………ん、朝日が昇ってきたな。」
思い切り伸びをして体を起こすアレン。
シェイラを城に預け、再び砦に戻っていた。
「お、アレン起きた~?」
隣では体操中のアメリア。
来たる戦闘に張り切り、体を動かさずにはいられないらしい。
砦の1階で夜を明かした生徒たちは主にアレンの部隊。
傷を負った者も、魔法と睡眠でなんとか動けるようになったようだ。
「あ、アレンさん。おはようございます。」
「ん、おはよ。」
ミーアが朝食を持って食料庫から出てくる。
「さて、朝食にしようか。」
「アレン、エリア起こしてあげなよ。」
「エリア?ああ、これか。」
近くには毛布の塊が落ちている。
固い床に座って寝るのが耐えられなかったらしい。
だったら仮眠室で寝ればいいのに、と疑問に思いながら、近寄ってその塊を数回叩いてみた。
「おい、エリア!朝だぞ!」
「ん~………」
毛布の塊が裂け、眠そうなエリアが顔を出す。
「…………くわぁ~……」
「さっさと食べて城に戻れよ?もう明るいんだし。」
「………ん~……」
アレンには返事をせず、ミーアの持ってきたパンにかじりつく。
「………美味しくない。」
「贅沢言うな。」
確かに保存食のパンはパサパサしてまずい。
ベーコンも何となくいつもより固く、塩っけが強い気がする。
「紅茶ありましたけど……煎れてきましょうか?」
「うん、お願い。」
「はい。アレンさんとアメリアさんのも用意しますね。」
隊の全員に朝食を運んだミーアが再び食料庫に入る。
アレンがさりげなく立ち上がって声をかける。
「ミーア、手伝うよ。」
「あ、すいません。ありがとうございます。」
人数分のカップを並べるアレンと、手際よく紅茶を注ぐミーア。
その様子があまりにもお似合いで、エリアはパンを運ぶ手を止めて睨んだ。
(……昨日は守ってくれたのに………)
自分の非を許し、庇ってくれたことに対し、内心とても嬉しかったエリアだったが、先ほど帰れと言われたことや、今の様子にそんな気持ちは完全冷めてしまった。
不機嫌そうなエリアを見て、ニヤニヤ笑いなのは隣のアメリア。
その笑いに気づいたエリアは、そっぽを向きながらまずいパンを口いっぱいに頬張った。
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