両校交流戦、秋の陣~後編~

23/38
前へ
/334ページ
次へ
「名前を呼ばれたやつはそれぞれの隊に行ってくれ。残りは俺とクイーンの護衛だ。」 「アレンは進攻しないの?」 「したいんだけどな……どうやらレティスに嫌われたらしくて。」 残念そうに苦笑するアレン。 確かに勝手と言われても仕方ない進攻もしたし、エリアの護衛が必要なのもわかる。 だが、簡単に諦められるほど人間はできていない。 「隙を見て援軍に行くからさ、先に行っててくれ。」 「………うん、わかった。じゃあまた後で!」 アメリアがマーレイの近くに走っていく。 「じゃ、残りは適当に哨戒しといてくれるか。真ん中の橋が穴にならないように見といてくれ。」 アレンの指示を受けて隊の生徒は散り散りに歩き出した。 「アレンさん、私は……」 「ああ、ミーアは……」 アレンは少し悩む。 優しいミーアが哨戒で敵の生徒を見つけたところで、何もできずに見ていることしかできないのは知っている。 「………紅茶をお願いしようかな。一緒に休憩でもしよう。」 「あ、はい。わかりました。」 エリアは会議室に篭り、日差しと毛布のおかげでうとうとしていた。 アレンの入室に気づくこともなく、静かに寝息をたてている。 「………相変わらず、呑気なやつだ……」 アレンはテラスに出て下の方に目をやる。 進攻に動く生徒が見えた。 少し悔しくなったので、振り返って目線を室内に移す。 眠るエリアの他には大きなテーブルと地図くらいしかない会議室。 エリアを起こす気にもならず、向かえの席に腰を落とす。 「く~……く~………」 「……緊張感のないやつだな……」 この安らかで平和な寝顔を見ていると、擬似でも戦争をしていることを忘れてしまう。 頬を指で突いてみる。 「ぬぅ……ん……」 起きそうになりながら、再び寝顔に戻るエリア。 暇すぎてやることもないので何度か突いてみる。 「ん……何よぅ……」 「ありゃ、さすがに起きたか。」 うっすら開けたエリアの目にはアレンが映る。 「……何であんたがここにいるの?」 「お前の護衛役になったからだよ。」 会議に参加しなかったエリアはそのことを知らない。 加えて、他の隊は進攻していることを教える。 「ああ、暇だなぁ………」 自分が側にいながら暇だとぬかすアレンにムッとするエリア。 「アレンさ~ん、準備できましたよ~!」 ドアの向こうから聞こえるミーアの声に、さらにエリアの表情は不機嫌になった。
/334ページ

最初のコメントを投稿しよう!

551人が本棚に入れています
本棚に追加